特別寄稿 次代を開くキーワード4


―― 四国新聞 ――

新たな知恵の光の道を

 万葉の昔より「見れども飽かぬ」と詠われてきた憧れの香川の天地を、私が初めて訪問したのは、50年前の2であった。郷土を愛する誠実な若人たちと「青春は修行の時代。大いに学ぼう」と語りあったことも懐かしい。先日も、その友人たちが元気な近況を伝えてくれた。嬉しかった。
 四国の友は信義に篤(あつ)い。この半世紀、どんな時も楽を分かち合ってきた友情は、私の宝である。
 今、瀬戸内海は、海苔収穫の季節である。東京湾の海苔づくりの家に育った私には、真冬の早の凍える海での労作が偲(しの)ばれてならない。
 東かがわ市の私の知るご夫妻は、仲間と協力して「浮き流し」という新しい技法に挑んだ。水深が深くて波浪の荒い水域でも、支柱を立てる代わりに、ブイを浮かべて養殖を可能にしたものだ。
 海苔が艶を失う色落ちなど、試練は絶えないという。だが、研究や工夫を重ねて、乗り越えてきた。「境は打開するためにある」と、寒風にも笑顔で胸を張る。


「志国」の誉れ高きと技の継承
 三豊市仁尾町で生産される「袋かけみかん」も、有だ。一つ一つ丹精こめた手作によって、ひときわ甘美(かんび)な黄金の果実がもたらされている。
 「外には造化(自然)を師とす」という中国の格言がある。「知識」はコンピューターからでも得られる。しかし、それを生き生きと活用しゆく「知恵」は、大自然を師のように大切にして学んでいくに育まれるのではないだろうか。そしてまた、人間と人間の真剣な生命の打ち合いの中でこそ、創造と調和の「知恵」が啓発される。
 日本の文化の華「讃岐漆芸」が、二百年の歳を超えて、始祖・玉(たま)楮(かじ)象(ぞう)谷(こく)以来の伝統美を守り、発展させ、磨き抜かれてきた根底にも、「師匠と弟子」「先輩と後輩」の絶え間なき薫陶(くんとう)がある。
 高い香川県漆芸研究所では、巨匠の方々が個人教授に近い形で、自らの技を惜しみなく伝える。未来の巨匠たちは、それを受け継ぎ、多彩な漆芸術を創造していくのだ。この研究所で指導に当たられた、人間国宝の音(おと)丸耕堂(まるこうどう)先生は語られた。
 「深ければ深いほど、しければしいほどですね、それに携わる者はファイトが湧(わ)きます」
 四国には「師国」すなわち「師の国」ともいうべき、一流のと技の継承が冴(さ)え渡っている。


「連帯の文化」を創る新しき四国の道
人であれ、団体であれ、文明であれ、傲慢になって学ぶことをやめ、孤立した時から、衰退が始まる。惰や油断を排して学び続け、他者とを結び合っていくところが、勝ち栄えていける。
 私の友人である、アルゼンチンの人権の闘志・エスキベル博士は語っておられた。
 「人間が今、挑戦への『勇気』を持てば、未来の『収穫』は自ずと到来する。その挑戦とは、積極的に異なるものと結びつき、『連帯の文化』という新しい道を探求することである」と。
 50年前の2、私は香川から土讃線に乗って高知へ向かった。それは、明治時代、若き指導者・大久保褜之丞(おおくぼじんのじょう)が、物産に恵まれた各県を結ぶために切り開いた「四国新道」をたどりながらの旅でもあった。百年先の人々の連帯を見つめて、厳然と道を創ってくれた讃岐の先人の魂は、今も私たちの胸に熱く迫る。
 激動の世こそ、新たな知恵の結合によって、新たなイノベーション(革新)を呼び起こす時だ。
 「四国は、歴史を変える逸材が躍り出る不議な宝土だ。四国の人物と胸襟を開いて友情を結べ!」
 きょう211日、百九周年の生誕の日を迎えた、わが師・戸田城聖先生の遺訓のひとつであった。

【2009-2-11 四国新聞



サイズが合わなくて、ちと見にくいですが、新聞UPしました。


今、東かがわ市で海苔養殖に取り組んでいる同志は一軒だけで、同級生のメンバーです(HN船守弥三郎夫妻)
毎年、年末にあみはりの手伝いに行っています。
海の荒れる日が少ないと、4〜5日で終わるのですが実際は天候に左右されるため、1週間ちょいぐらいはかかります。


「浮き流し」とは、必要個所にブイを浮かべ、ロープで四角に枠を組みます。
上から見ると、競泳プールみたいなじ。
幅1メートルぐらいで、長さ25メートルぐらい(目測なので実際はどうなんでしょう?)の網に海苔の種がついているものを、張っていくわけです。
組んだロープに海苔網を、手で結んでいく大変な仕事。早く張ると、早く刈り取れるので網張りは「戦争」です。
私が手伝う仕事は、網を結ぶのに合わせながら、船を引っ張ることです。
いうなれば、1日「綱引き」をするわけです。
翌日には、全身が筋肉痛……。年だし><


2001年以来、海に栄養がなくずっと色落ちがひどく赤字続きだったそうですが、今年はひさびさにいいじだそうです。
豊作(っていうのかな?)を祈る。がんばれ!