教科書無料について


「教科書無料は公明党の実績ではない」と議論されているサイトを見つけたので、少し調べてみました。


教科書無料については、かなり昔から議論されており、昭和25年の国務大臣答弁でもあるように、一部無料配布が行われていたこともあるようです。
私自身もう少し勉強が必要ですが、参考になればといます。


参考資料( 国会会議録検索システム  http://kokkai.ndl.go.jp/ ) より。
注・分かりやすくするために、赤字をいれています。

  • 参 - 文部委員会 - 閉2号

昭和25年0920日
国務大臣天野貞祐君)
第一の点については、六三予算の建築費につきましては、私は六十三億をどうしても獲得したいとつたのでありますけれども、この六三建築というのは、従来でも一応これで可なりできているのじやないかというような考えもあつたりして、六十三億どうしてもこれを実現するということが困で、四十五億ということに差当つて内定いたしておる次第であります。
私はこれでは決して満足するものではございませんが、併しこの六三予算は決して建築の予算はこれを以て打切つたのではなくして、続いて幾年かかつてでも、併しこれは短い程いいのですが、私は小学校は〇・九、中学校は一・二までどうしても推し進めようという考えを抱いております。
からしてこれで決して満足だということを言う程のことはございません。
それからそれに伴つて教科書の無償配布ということを考えたのでございますが、これも非常に遺憾でありますけれども、第一学年だけにしかこれを配布することができないという現状でございます。

◎第1回国会〜第144回までのデータは、画像から読みとったテキストデータですので、誤字・脱字等がある可能があります。正確な表記は会議録(冊子)画像をご覧ください。との注書きが表記されています。


誤字が多いのか味がよく分かりませんが、昭和25年に第一学年にだけ教科書無償配布が実現したとの答弁ですね。


ちなみに公明党のかんたんな歴史

昭和31年  参議院、6出馬3当選(大阪の戦い)無所属
昭和34年  参議院、6出馬、全員当選
昭和36年  参議院、公明政治連盟発足
昭和37年  参議院、9当選。非改選を含め15議席に公明会(院内会派)発足
昭和39年  参議院、15地方議員1200余公明党結党、参院会派公明党に。
昭和40年  参議院、11当選。20議席に。
昭和42年  衆議院に進出、25当選。


公明党(当時無所属)の議員の質問として教科書無償との言葉を引き出したのは、S34年白木義一朗氏のこの質問です。

  • 参 - 本会議 - 4号

昭和34年1029日(一部抜粋)
○白木義一郎君
次に、石炭不況に基づく諸問題については、先ほど御答弁がありましたので、省略をさしていただきますが、けさのラジオでは、離職者の受け入れを、東京都では約百二、三十人を完了したと、このようなニュースをけさ聞いたのでございますが、先ほどの話によりますと、毎二千人の離職者が出ている。このようなことでは、一体いつになったら救済ができるのでしょうか、どこにまた政府は重点を置いてこの対策を進めていくか、お伺いをしたいといます。
 これに付随して、現地の小学校の学童は、給食も学用品もなく、そのために不就学及び長欠者がふえ、不良化のおそれさえも増大し、教育低下の現状は児童の将来のため大問題であります。従って、児童福祉の強力な充実徹底をはからなければならないが、どのような措置をとるのか、文部大臣に説明をしていただきたいといます。
(中略)
国務大臣田竹千代君) 
石炭鉱の不振に伴う失からくる家庭の児童が不良化していく傾向がある、それに対しては文部省はどうしておるかというお尋ねといますが、文部省といたしましては、まず、できるだけ学校に出席するように勧め、また学用品、教科書のごときはできるだけ無償でこれを配付するように努め、就学を奨励する。そのほか個別指導に重きを置いてできる限り生活指導をやっていきたい。さらに各関係機関と緊密な連絡をとりまして社会施設その他を通じてそれぞれ処置するとともに、児童の閑暇をできるだけ活用するようにして、その不良化を防止したいと考えておる次第であります。(拍手)

                                                                                      
この時は、石炭不況ではじまる児童の教育について質問したもので、教科書無料を図したものではありませんね。


ということで、客観的にみると公明党が「教科書無償配布」を実現したというのは少し言いすぎかなとじました。


しかし、一部しか無償で無かったものを、粘り強く取組み徐々に拡大し「義務教育9年間」のすべてを無償配布にしたことにかんしては、公明党の実績の一つといえるといます。


それに、柏原ヤス氏は昭和34年初当選以来「文教委員」にを連ねていることを考えれば、それまでもかかわってきたことは確かです。


結果としては、与野党を問わず、他の議員の方も質問されていますので、公明党だけが推進したのではありませんが、協力して勝ち取ったものとわれます。
公明政治連盟(当時)のみの実績ではありませんが、公明党の実績としてかかげても問題はないでしょう。


昭和37年になると、公政連(当時)の辻、柏原、両議員からの質問が見られます。
私の調べた限りでは、教科書無償配布に関しての一番古い質問は以下のものです。

  • 参 - 本会議 - 7号

昭和37年0124日(一部抜粋)
辻武寿君 
次に、教科書の問題でありますが、教科書無償配付は今や世論になってきているときに、逆に政府は一四%の値上げをして、国民を悲嘆の底に突き落とした。
義務教育の教科書を無償にすることは、教育の機会均等と義務教育費無償を明記する憲法二十六条の精神に沿うことであり、池田内閣唯一の善政かと楽しんでいたのでありますが、わずか三十八年度の一年生だけにちょっぴり実行するというお預けを食って、せっかくの国民の期待も、むなしく派閥政治のかなたに消え去ったのであります。
新聞紙上には、文相初め自民党のおえら方が、教科書無償配布を出したり引っ込めたりして、結局は絵にかいたぼたもちのような結末に立ち至ったことに対して、文相はその間の実情を国民に納得のいくように説明していただきたいとうものであります。

昭和37年0328日(一部抜粋)
柏原ヤス君 
教科書無償の問題についてお伺いいたしますが、教科書を無償にしたという図についてちょっとお伺いいたします。

国務大臣(荒木萬壽夫君) 
憲法の二十六条が、義務教育は無償とすると宣言いたしております。これに対して、御承知のとおり、現在は、教育基本法におきまして、義務教育では授料はとらないという趣旨のことをまた宣明いたしておりまして、今度の教科書を無償とするという建前を確立しようとしておりますことも、憲法に基づいて、その趣旨を、その理をさらに前進し、実現していきたい、こういう考え方に立っております。


この国務大臣の答弁を見る限り、義務教育は無償とするという考えは、先にあげた昭和25年の答弁とくらべても、元々あったようです。
ただし「建前を確立しよう」という消極的なものですが……。


公明会を立ち上げて以降、昭和38年になると、教科書無償配布の質問がどんどん出てきます。

  • 参 - 本会議 - 4号

昭和38年0125日(一部抜粋)
辻武寿
次に、教科書無償配付の問題でありますが、政府は昭和三十八年度予算においてようやく小学校三年までを無償にしようとしております。
しかしながら、本来「義務教育は、これを無償とする。」という憲法第二十六条の規定に照らしても、むしろおそきに失しているのであり、義務教育の中学三年までは当然無償にすべきであります。
わずか百四十億の予算でしかありません。防衛費の来年度における予算の増額分の四分の一をこれに回せば実現できるのであります。
また、膨大な財政投融資の約一%強を文教費に回せば済むのであります。
しかし、これすらなし得ない状況で、どうして文教を重視したと言えましょうか。
義務教育の教科書無償は直ちに実現すべきであるといますが、文部大臣の見解はどうか、お伺いいたします。
教科書無償問題でもう一つただしておきたいことは、三十八年度の教科書無償は沖縄を含めたものとして計算されているはずでありますが、一十九日のニュースによりますと、アメリカ政府はこの問題に対し、外務省と総理府の特別地域連絡局に対し色を示したと伝えられておりますが、実情はどうなのか。また、事実であるならば、どのように対処されるつもりでありますか、総理並びに文部大臣の考えを明確に示していただきたいといます。

  • 参 - 本会議 - 13号

昭和38年0313日(一部抜粋)
柏原ヤス
 第二にお尋ねしたいことは、義務教育における教科書代についてであります。
来年度予算編成にあたり、文部省の要求は当初七十億円で、これは総予算のわずか〇・二五%にすぎなかったのであります。
しかるに、計上された予算は半額にも及ばない二十七億円に削られ、ようやく小学校三年生までの無償配布が認められただけであります。
このように大幅に教科書代が削減された理由を明らかにしていただきたいといます。
父兄のは、少なくとも中学三年までの無償、予算にして百四十億円程度のものは、何はさておいても実現してほしいというのが偽らざる希望であります。
私どもは、すでに十余年にわたって義務教育の教科書を無償にせよと叫び続けて参りました。
私は、この実施はおそきに失したばかりでなく、その金額もきわめて少額で、文教政策を重視する池田内閣としてはあまりに消極的だと言わざるを得ません。
さらに昭和三十八年度予算措置に示された各省の見解、すなわち大蔵大臣の主張する、半額は地方負担、しかも私学は除くという、この考え方の論拠と、文部大臣の考え方と、さらにそれを了とした総理大臣、三者の所見をお伺いいたしたいとうのでございます。
 第三に、教科書無償配布の将来の見通しについて質問いたします。昭和四十年度以降の教科書無償問題をどのように計画なさっているかということであります。確かに一年先のことまではわかりました。
しかし毎年々々このような問題で紛争することは、まことに恥ずべきことだといます。
政府は、教科書無償に対して、四十年以降はどんな施策をお持ちになっておられるか、財源的見地から大蔵大臣に、また行政的見地から文部大臣に、具体的に責任ある御答弁をお願いいたします。


昭和38年度は、小学3年までの教科書無償が認められていたことが読み取れます。
そこで「義務教育の教科書無償を直ちに実現せよ」と主張しています。


それから、この時の柏原発言(青字の部分)が「教科書無料は公明党のみの実績」との誤解のもとになっているようです。
この時から10年(10余年とおっしゃっていますが)前は、昭和28年になりますから。
昭和31年が「大阪の戦い」なので、これはどう考えても不可能ですね。


しかし、このほかにも昭和37年以降は、教科書無償についての質問も増えていきます。
公明党は、一部しかおこなわれていなかった教科書無償配布に、粘り強く取組み「義務教育9年間」のすべてを無償配布にした。当然、他の議員とも協力しあって」
というのが、より正確です。(笑)


いずれにしても、枝葉末節のことで、いちいちこだわる必要はないことですが学んでいくことが大事だといます。


今日は雨ふりで現場が中止。休みになり時間が取れたので加筆しました。
長くなってしまうので、一部資料のみですが、いろいろ学んでいくとおもしろいですね。
国会会議録検索システムでは、3時間ぐらい遊んでしまいました。(笑)
「もっといい資料があるよ」という情報があれば、教えて下さい。